今回は、先月発刊されたばかりの「世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑」と、戦後ベストセラーとなった「ものの見方について」の2冊を読みましたので、それらの感想を簡単に紹介させていただきます。
最初に紹介する「世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑」は、2021年5月に日経BP社より発刊された本で、内容は中国企業のビジネスモデルを解説した本です。
中国のIT系企業9社の成功事例を詳しく紹介していますが、各事例を単独で解説しているのではなく、1990年代半ばからの第1世代(アリババとテンセント)、2010年頃からの第2世代(3社)、2015年頃からの第3世代(4社)に分け、それぞれ前の世代との関連に触れながら、世界最速で大きく成長した過程と成功のポイントを多数の論拠を示しながら解説しています。
この本の筆者は、非常に多くのデータや知見に基づいて丁寧にまとめている印象を受けます。所属研究室の先輩・同僚・後輩なのでしょうか多くの方の協力も得ているようで、それも含め全ての出所が明示されています。
ビジネスモデルをビジュアルに表現する方法として、この本では全体を通してピクト図解とシステムシンキングの2つを活用しています。
ピクト図解は、ビジネスモデルを表現するのに使われています。一般的に、ビジネスモデルを書き表わす方法としてはビジネスモデルキャンバスをはじめ様々ありますが、この筆者が在籍する研究室ではビジネスモデルを図で表す共通のツールとしてピクト図解を使用されているようです。
システムシンキングは、因果関係を矢印で示す図で、この本では、事例で紹介されている各企業が急成長した要因や好循環の様子をわかりやすく説明するためのツールとして使用されています。
この本は、企業9社の事例を、直感的にわかりやすい図と丁寧な解説文を読むことにより、各創業者および関係者が国内外を全力で走り回り、いちはやくいいものを取り込んで凄いスピードで大きく成長したことを具体的に知ることができる本です。
2冊目として紹介する「ものの見方について」は、イギリス、ドイツ、フランス、日本の各国民の考え方について、政治・経済・歴史の視点から分析し考えを述べたものです。
この本の筆者は、戦後、欧州に駐在した経験をもとに各国民の考え方について考え綴っています。最初の章はイギリス人について書かれており、次の章ではドイツ人についてをイギリス人と比較しながら述べています。その次の章ではフランス人についてをイギリス人とドイツ人に触れながら解説し、最終章では、これらすべてに触れながらも日本人についてを高い視点から述べています。初版発刊から70年経った今でも通用する内容であることに深い感銘を受けます。
この「ものの見方について」の書き出しは有名なのでご存知の方は多いと思います。
イギリス人は歩きながら考える。
フランス人は考えた後で走りだす。
スペイン人は、走ってしまった後で考える。…途中略…
ドイツ人もどこかフランス人と似ていて、考えた後で歩きだす。…途中略…
それでは、これに型どっていったら、我々日本人は一体どういうことになるのだろう。…
以下略…
この本の特徴ですが、結論がどこかにまとめられているのではなく、全体を読み通して理解するようになっています。そのため、答えをすぐに欲しがるせっかちな人にとっては少々不満かも知れませんが、「イギリス人は歩きながら考える」とあっても、「日本人は○○○である」という答えはどこにも書かれておらず、後半で日本人について多くの紙面を割いていますので、そこから読み取ることになります。
ところで、事業創造や商品開発の分野では、工学的な理詰めのアプローチよりも、仮説に基づいてまず実行し、その結果を検証して修正を繰り返していくアプローチの方が、より速くより良い結果に到達できるとよく言われます。
これを「ものの見方について」の書き出し部になぞらえると、「考えてから歩く」よりも「歩きながら考える」方が、事業づくりや商品づくりの際の考え方としては良いと言えます。
最後に、「歩きながら考える」というのは、最初は散歩程度の距離と時間ぐらいに思っていたのですが、この本を読み進めていくと、イギリス人は200年を越えて今日まで歩き続けてきた、考えてきた、という記述があります。この想像を絶する長期にわたるスケールの壮大さにも学ぶべき点があるように思います。
↓ クリックするとアマゾンに飛びます