「ドリルと穴」その2

ドリルと穴、ブリジストン、目的と手段ビジネスセンス

別記事で、有名な話「ドリルと穴」からお客さま視点の重要性について紹介しました。セオドラ・レビット氏が50年以上前に「マーケティングの近視眼」として顧客志向(お客さま視点)の重要性を説いた有名な話です。

この「ドリルと穴」の話は、お客さま視点で考えることの重要性を示しているのと同時に目的思考で考えることの重要性も示しています。人は、目的(穴をあけること)を実現するために手段(ドリル)を手に入れようとし、その対価としてお金を支払います。けっして手段(ドリル)を手に入れるのが目的ではありません。

商品・サービスやビジネスの議論をする時は、手段の議論をするよりも目的の議論をしたいものです。

株式会社ブリジストンは、バス乗降口とバス停の歩道部との隙間や段差を少なくする「バリアレス縁石」を開発したそうです。(出所は下記のホームページ)

横浜国立大学と公益社団法人日本交通計画協会との共同研究とは言え、タイヤ開発を得意とするメーカーであるブリジストンの技術者が縁石を開発したと知った時には、「ドリルと穴」の話(目的思考の重要性)が頭をよぎりました。

おそらくブリジストンの開発者は、当初、バスがバス停歩道部に安全かつ容易に幅寄せできるタイヤを開発したかったのだと思いますが、開発者が自分たちが本当にやりたいこと(バス乗降時のバリアフリー化に貢献するという目的)をぶれずに追求したため、「安全かつ容易に幅寄せできるタイヤを開発すること」はその一手段であると認識し、目的を達成するためならタイヤ開発にこだわらなくても別の手段である縁石開発でもいいのではないかという議論になったのではないかと思います。

ひとつの手段の議論ばかり続けていると、それを欲しいと思わないエンドユーザーの存在に気づけなくなるかもしれません。それよりも目的レベルで議論した方が、それをエンドユーザーが欲しがるものかどうかで考えることができ現実的で良いと言えます。

もともとやりたかったこと(目的)が達成できるのなら、最初に思いついたアイデア(手段A)に固執する必要はありません。別のアイデア(手段B や手段C)に変えていくことでお客さまに受け入れられるアイデアとなる可能性があります。

〔参考資料〕
株式会社ブリジストン ホームページ
タイヤ開発技術を活用。“バリアレス縁石”で目指す、バス停のバリアフリー化
https://www.bridgestone.co.jp/chaseyourdream/technology/curb.html