新しい商品や事業を考えている時に「そうぞうりょく」と聞くと、普通は「創造力」を思い浮かべますが「想像力」というのもあります。
新しい商品やサービスをユーザーはどのように使ってうれしいと思うのか、その様子を「想像」できるに越したことはありません。「創造力」だけでなく「想像力」も加えて2つの「そうぞうりょく」を身につけたいものです。
ユーザーがどのように使うのかを想像したからといって必ずしもユーザーがその通りに使用してくれるとは限りません。以下は、ユーザーの反応を想像する(予想する)ことの難しさを知る事例として斬新なクルマの開発事例で考えてみます。
株式会社FOMMが開発した水に浮く小型電気自動車 FOMM ONE(フォムワン)をご存知の方は多いと思います。2019年東京モーターショーにも展示されていましたし、多くのメディアがその斬新性を紹介しています。
このクルマの特徴を説明すると、
・小型にもかかわらず大人4人の乗車が可能
・バッテリは着脱式のため長い充電時間を待つ必要なし
・ブレーキとアクセルの踏み間違いを防止するためにブレーキは足元、アクセルは手もとのレバーで操作するようになっている
・なんと言っても緊急時に水に浮き水面移動できる
少し前ですが、テレビ番組(テレビ東京『ガイアの夜明け サンデーSP』2019.1.27放送)で、タイでのFOMM ONEデビュー試乗会(2018年11月)の様子が映し出されていました。
洪水被害時には水に浮いて移動できるクルマですし、排ガスを出さない環境によい電気自動車です。また、ブレーキとアクセルの踏み間違いもありませんので安全なクルマです。小型なのに大人4人が乗れて渋滞緩和にいいかもしれません。しかもカラフルでかわいいクルマですので、試乗会に来ていた人たちは笑顔で「運転していてとても楽しい」と話していました。
このブログを読まれているみなさんは、このクリエイティブ(創造的)で素晴らしいクルマFOMM ONEの特徴と試乗会の様子を聞いて、実際に購入したお客さまは、このクルマのどこに嬉しさを感じ、どのように使用するのかを想像できるでしょうか。イマジネーション(想像力)を働かせて考えてみてください。
前述のテレビ番組の終わりに、このクルマの最初の購入者が登場し、開発者である社長さんに「このような素晴らしいクルマを開発してくれてありがとう」と述べていました。
その男性は車椅子に乗っている方で、購入の決め手は、手もとでアクセルの微妙な加減を操作できるクルマが欲しかったということでした。
社長さんは今までの商品化までの苦労が報われたのと自社開発のクルマが役に立つことに感極まるものがあったのでしょう、目に涙を浮かべておられたのが印象的でした。
私は、斬新で今までにない多くの価値を備えたクルマであるFOMM ONEを商品化されたことに共感めいた素晴らしさを感じています。開発された方々はユーザーが喜ぶ様子を繰り返し想像しながらその実現のためにいくつもの苦労の壁を乗り越えたものと思います。
創造力および想像力を十二分に発揮して商品化を実現したFOMM ONEの開発者であっても、「アクセルを手もとで微妙に操作できる」ことを最大のうれしさと考える人が最初の購入者であったことは正直意外だったのではないでしょうか。
私にとっては、創造力に加えてユーザーがどのように使うのか(ユーザーがどのような所にうれしさを感じるのか)を想像することの難しさと重要性をあらためて考えさせられた事例でした。
〔参考にしたサイト〕
株式会社FOMM ホームページ
https://www.fomm.co.jp/